「青色欠損金の繰戻し還付」新型コロナウィルスにより発生した損金は、法人税を還付できるかもしれません 第1回
2021年9月7日
「新型コロナウィルス感染症緊急経済対策」における「税制措置」の中でも、適用できる場合は非常に有益であると思われる、「欠損金の繰戻し還付制度」について、2回に渡りお伝えします。
今回は、第1回として「青色欠損金の繰戻し還付」についてお伝えします。
青色欠損金の繰戻還付制度とは
制度概要
欠損金の繰戻還付とは、青色申告書を提出する事業年度に欠損金が生じた場合、その欠損金額をその前事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求できるという制度です。例えば、前期利益に対して法人税を納税しているが、当期は欠損金が生じてしまった場合、この当期の欠損金を前期の所得に充当して、前期納税した法人税を還付してもらうことができます。
対象法人
青色欠損金の繰戻し制度を受けることができる対象法人は、「新型コロナウィルス感染症緊急経済対策」における「税制措置」の一環で対象範囲が拡大されています。
➀拡大前資本金1億円以下の法人(中小法人)
➁拡大後(新型コロナ税特法)資本金10 億円以下の法人
(注)大規模法人(資本金の額が10 億円を超える法人など)の100%子会社、及び、100 %グループ内の複数の大規模法人に発行済株式の全部を保有されている法人などは除かれます。
対象期間
令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金において適用できます。
適用要件
青色欠損金の繰戻還付制度の適用要件は下記の通りです。
➀還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して確定申告書(青色申告)を提出している
➁欠損事業年度の確定申告書(青色申告)をその提出期限までに提出している
➂上記➁の確定申告書と同時に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出する
青色欠損金の繰戻還付制度の還付額計算方法
(1) 法人税次の計算式を元に、還付請求をすることができます。
還付所得事業年度の法人税額×(欠損事業年度の欠損金額(注)/還付所得事業年度の所得金額)
(注)欠損事業年度の欠損金額は、分母の還付事業年度の所得金額が限度とされます。
(2) 地方法人税法人税の還付請求額×4.4%
青色欠損金の繰戻還付制度の還付請求手続き方法
還付請求手続きをするには、「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を記入する必要があります。国税庁ホームページに書類が掲載されているので、ご活用ください。
青色欠損金の繰戻還付制度の注意点
➀地方税の還付はできません還付は法人税だけに適用され、地方税である法人住民税や事業税には適用されません。ゆえに、法人税や地方法人税で繰戻還付が適用された場合も、事業税や住民税はその繰戻還付をなかったものとし、その事業年度に生じた欠損金を翌期以降に繰り越すための手続きがそれぞれ必要になります。
➁税務調査還付請求を実施すると、原則として欠損を確認するための調査が入ります。ただし、全ての会社に訪問して帳簿を調査するというのは税務署の業務効率上考えにくく、還付金額に応じて、書面による照合や、電話による聞き取りで完結する場合もあります。
➂欠損金の繰戻還付制度を活用するか、繰越控除を活用するかの判断基準
欠損金を繰戻還付で使うか、繰越控除で使うか、どちらの選択が法人税の負担を最も少なくするかについては、翌期以降の所得の状況により異なりますので注意が必要です
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※この記事は2021年9月7日時点の記事となります。その後の法改正で対応が異なってくる場合もございますので、気になる方は一度あすか税理士法人までお問合せください。