税務調査はどこまで調べる?
2021年7月9日
税務調査ではどこまで調べられるのか、また予想していない資料の提示を求められた場合、どこまでその要求に応じるべきなのか不安になっている方も多いことでしょう。
こちらでは、税務調査の調査範囲とそれに備えるための対策方法を解説します。
税務調査にはどのような手続きがあるのか
税務調査とは、納税者の申告内容が適正であるかどうかを確認する調査のことであり、大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2つに分けられます。
任意調査とは、調査対象となる企業に協力・合意を得て、実施される調査のことです。
対象企業に対して原則、税務調査前に事前通知があり、調査日程をあらかじめ税務署に確認することができます。なお、税務署から提示された日時に先約などがあり、都合がつかない場合には、別の日時にしてもらうことや、いったん確定した調査日時を変更してもらうこともできます。
一方で強制調査とは、調査官が裁判所から捜査令状を受けて強制的(いわゆるマルサ)に実行するものです。
強制調査を実行する場合は、調査対象となる企業の協力・合意が必要ないものであるため、突然、調査が行われることになります。
税務調査の調査範囲は?
任意調査では、税務職員が法律上、納税者(経営者、従業員を含む)やその取引先(銀行等を含む)に質問し、事業に関する帳簿書類やその他物件に関する調査を行います。
そして、税務職員は、事業の取引事実を確認する証拠書類を集めるため、その物件の提示や、提出を求めることが認められています。(国税通則法74条の2~74条の6)
任意調査では、「帳簿調査」が基本となります。
したがって、請求書・領収書等の証拠書類を含む帳簿書類等が保管されている場所(事務所)が主たる調査場所となり、帳簿を中心に申告内容が適正であるかどうかが、調査の対象とされます。
調査官が必要だと判断した場合は、了解を得た上で、業務用の手帳、事務所内の金庫や机の中も確認することができます。
また、製造業においては工場、倉庫等、小売業では各店舗などに範囲が及ぶことがあります。そして、工場内にあるパソコンのデータが調査対象になったり、店舗の従業員の方に聞き取り調査が行われたりすることもあります。
また、任意調査であっても、「無予告調査」という、事前の連絡なしに抜き打ちで実施される調査があります。帳簿調査だけでは確認できない項目がある場合、無予告調査に及ぶことになります。この場合、調査範囲は帳簿調査以上に広範囲にわたることもあります。
ただし、「無予告調査」は強制捜査ではなく、あくまで任意捜査の一環であるため、顧問税理士に立会いをしてもらうことが可能です。顧問税理士が到着するまで捜査開始を待ってもらうこともできます。「税務署が突然来た」という場合でも、直ぐに調査に応じることなく、慌てずに顧問税理士に連絡することをお勧めします。
税務調査はどこまで調査をするのか
税務調査の基本は、売上や経費の根拠となっている取引全般を調査し、申告内容が適正であるかどうかを調べることです。
そのため、税務調査に必要があるだろうと税務職員が判断した場合には、帳簿書類や金庫以外にも提示等を求められることがあります。
01.パソコン
申告書作成の基になる会計帳簿等がパソコンで作成・保存されていることが多いため、パソコンの中の確認を求められた場合には、応じなくてはならないことはご理解してください。
さらに、パソコン中にあるエクセル、ワード等各種ファイルや社内・取引先とのメールも税務調査の調査対象になることがありますので、注意してください。
とはいえ、任意調査の場合は、税務職員がパソコンを断りなしに操作することや、各種ファイルや電子データを持って帰ることはできません。仮に、税務調査に必要なため、電子データの持ち帰りが必要になった場合は、「申告内容の適正さを調査する上で、該当データが必要」であることを納税者に了解してもらう必要があります。
もし紙で用意できるものを電子データで提供するよう要求された場合は、税務職員に電子データで渡さなければならない明確な理由を求めることも一つです。
ただし、申告書の内容に問題があることが明白であり、税務職員が内容を深く調べる必要があると理解できるような場合は、強制的に電子データを渡さなければならないことも出てくるので注意してください。
なお、個人所有のパソコンはいきなり調査対象とはなりませんが、個人のパソコンやスマートフォンを使って業務上のやり取りをしていて、調査上必要と認められた場合には、中身を見せなくてはならなくなりますので、くれぐれも注意してください。
02.通帳
税務調査にて税務職員から通帳の提示を要求されることはよくあります。
税務職員が通帳で確認したいことは、
⑴税務調査の対象となっている期間内に大きなお金の動きがないか
⑵定期的な入金がないか
ということです。場合によっては過去の通帳にもさかのぼって提示要求することがあります。
税務職員は特定の期間における所得を推定しながら、税務調査を進めますが、
「ホームページをはじめとする販売状況からすると、多くの利益を出していることが想定されるのに、確定申告書上の所得が少ない」
「在庫の余剰が想定されるのに、それに対して報告されている在庫がずいぶん少ない」
等のように、疑わしい事柄がある場合は、通帳提示を要求するケースにつながります。
通帳提示を要求された場合、法律上、事業用の通帳であれば提示しなければなりません。
任意調査であっても、開示を拒む正当な理由が認められない限り、提示が求められます。
事業用の通帳は提示を求められた場合は、疑義を晴らすためにも開示することになります。
一方で、個人の通帳は事業の納税額を判断するための資料には該当しませんが、事業資金を個人から借入れしていて、個人通帳から資金の出し入れをしている場合には、個人通帳の提示を求められることがあります。
また、個人事業から法人成りした会社の場合、クレジットカードの契約をそのまま個人にしていて、各種支払いが個人の通帳で継続して行われていることがあります。
そのため、税務調査の際、個人の通帳も開示しなくてはならなくなりますので
税務調査を短期間で終了させるためにも、事業用の通帳と個人の通帳は、はっきりと分けるようにしましょう。
税務調査の準備は何をすればいいのか?チェックポイントで詳しく解説
では税務調査のためにどのような準備をすればいいのでしょうか?
税務調査でチェックされやすいものとして以下があげられます。日々意識するといいでしょう。
- 請求に漏れがないか
- 今期計上すべき売上が来期に計上されていないか
- 未計上の現金売上がないか
- 仕入れや外注費の証票類が適切に保存されているか
- 支払先からの請求書に改ざんがないか
- 預け在庫の管理が適切か
- 積送品の計上漏れがないか
- 実地棚卸原票は清書しても処分しないで保存
- 経費の使途が明確か役員の個人的経費が混じってないか
- 出張時の旅費や日当の支給が適正か
- アルバイトなどへの雑給が適正か
- 役員報酬額や親族への給与が適正か
- 交際費等の処理(帳簿記載・資料保存)は適正か
- 架空・過大な経費はないか
- 役員からの借入金がある場合、その資金源は明確か
⑴売上について
⑵仕入れ
⑶棚卸について
⑷一般管理費について
⑸役員との取引
また、税務調査を短期間で終了させるために、当日までに下記の事項をしっかり準備しておきましょう。
⑴日々の取引の流れを説明できるようにする
⑵不規則的な取引があった場合は、特にきちんと説明できるようにする
⑶同種・同規模の企業に比べて特定の経費が多いなどの場合は、その経費が多いことの特殊性を十分説明できるようにしておく
⑷経営者の個人的費用と疑われやすいものは、きちんと説明できるようにする
⑸過去の税務調査における、修正事項や指導事項を確認する
⑹現金と出納帳の残高を合わせる
税務調査のご相談は、あすか税理士法人におまかせください。
税務調査はどの企業であっても対象となり得ます。
「うちは小規模だから大丈夫」と軽んじることなく、いつ税務調査があっても慌てることのないように、日頃から帳簿書類を整理し、適切な申告をするように心がけましょう。
税務調査に関するご相談は、あすか税理士法人にお任せください。
あすか税理士法人には、「税務署長」経験者を含む3名の国税OBや、「法学博士」「法学部出身者」など、税務調査のエキスパートが多数在籍しており、日々最新情報の分析・研究・研鑽を積んでおります。
万が一、税務調査の結果に対して納得し難いという場合には、最終的には税務署に訴訟を提起することになります。あすか税理士法人では、これまでの実績として、2件の大きな税務訴訟で勝訴した実績(最高裁判決勝訴)があります。(一般的に、租税訴訟の勝訴率は10%未満といわれています)
また、あすか税理士法人では、お客様の担当者だけでなく、様々なスタッフがその場面・その場面で、適切で丁寧な対応ができるよう、組織的なサポートの体制作りを行い、お客様のフォローの充実に努めております。税務調査に際しましても、調査の事前準備から当日の調査立会い・立ち合い後の税務署との折衝などに対し、組織的なサポートの下、お客様にご不安を抱かせないよう、きめ細かく対応させていただきます。
税務調査に関して、ご不安なことがございましたら、お気軽にお問合せください。
※この記事は2021年7月9日時点の記事となります。その後の法改正で対応が異なってくる場合もございますので、気になる方は一度あすか税理士法人までお問合せください。